SMART-1 は the first of ESA’s Small Missions for Advanced Research in Technologyの略語[1]. ESAが開発した初めての月観測衛星であり,太陽電池で得られた電力を使って, PPS-1350-GというSPT100をベースにしたホールスラスタによって月まで行った.最後は月に衝突し,その際の発光を観察して月表面の成分を解析した意欲的なミッションである2003年9月27日に打ち上げられ,2006年の11月15日に月の周回軌道に到着した.その後二年間ほど月の観察をした後,2006年9月3日に月に衝突した.
Space Systems Loral’s社が2004年に日本と韓国のブロードバンド用の衛星として打ち上げたMBSATには西側の商業衛星としては初めてのホールスラスタ(SPT100)が搭載された.ホールスラスタは南北制御用の推進機として用いられた.現在は残念ながらサービスは終了したがその間に貴重な運用データを提供した
アメリカ空軍の静止通信衛星で,正式名称はAdvanced Extremely High Frequency 1 。2010年Atlas Vにより打上げられ,当初は二液アポジエンジン(IA製BT-4)と4.5kWホールスラスタ(Aerojet製BPT4000)の双方によるGEO orbit raisingを計画していたが、 アポジエンジン不具合(エンジン納入後の外部からのコンタミ混入)により、ホールスラスタと一液姿勢制御スラスタによる軌道上昇を実施中し,2011年10月に無事に静止軌道に到達した.
国際宇宙探査ロードマップ(GER)Rev.1*で,将来の有人火星探査に向けて,小惑星または月への有人探査計画がある.この探査計画において, 有人飛行船は化学推進で行う予定であるが,物質輸送は大型の電気推進をメインエンジンに用いたカーゴが計画されており,このメインエンジンとしてホールスラスタが有力な候補としてあげられており,実際NASAはこの目的のための大型のホールスラスタの開発が進められており,ヨーロッパにおいても,HiPER(High Power Electric propulsion)として,開発が進められている.
宇宙システム開発利用推進機構は長年太陽発電衛星の建設を検討している。この建設において最大の課題は軌道への資材輸送費の抑制である。従来の化学ロケットを用いた場合、5GW級の太陽発電衛星(2万トン)の資材輸送には百兆円を超える費用がかかると試算されるが、採算ラインとしては1兆円が目標とされ、特に低軌道から静止軌道までの輸送にかけられる費用は1万円/kg 程度である。そこで軌道間物資輸送に資することのできる低燃費かつ大出力の電気推進機の開発が急務である。この有力な候補として,ホールスラスタが考えられている.