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新たな電気推進の開発を目指して

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超小型人工衛星

 近年、宇宙開発において小型衛星、特に超小型衛星の打ち上げが活発化している。超小型衛星とは、一般的には50 kg以下の人工衛星のことを指す。(超)小型衛星のメリットは、中・大型衛星に比べ、開発期間が短く、コストが低い点である。現在の国の予算内で中・大型衛星のみを用いると、打ち上げ可能な衛星数が限られてニーズを十分に満たすことは難しい。さらに、衛星打ち上げコストが高いことで、ベンチャー企業や大学等による宇宙事業への新規参入やビジネス化を妨げる要因となっているという現状がある。それらの問題を解決するためには、今後のさらなる超小型衛星の利用拡大は不可欠である。
 

研究目的

 しかし、超小型衛星はそのサイズから、電力的・搭載スペース的に大きな制約を受ける。そのため、これまでに打ち上げられた超小型衛星の多くは推進器を搭載していなかった。しかし、推進器は姿勢・軌道の維持・制御に不可欠であり、推進器を搭載することでより多様なミッションが可能となる。そのため、近年、「ほどよし3号&4号」や、「PROCYON」などのように推進器を搭載した超小型衛星もでできた。しかし、今後さらなる超小型衛星の利用拡大を実現するには、さらに小型かつ低電力で作動可能な推進器が求められている。推進システム全体としては、構造が簡素で高いロバスト性を持つものが望ましい。そこで、そのような特徴を持つ推進器を開発することが本研究の目的である。具体的な目標値の算出のため、本研究では以下のようなミッションを想定した。
     

想定ミッション:超小型衛星による超低高度飛行

 超低高度衛星は、従来の地球観測用衛星の一般的な高度である500~900 km より低い180~250 kmの高度を飛行する衛星である。超低高度を飛行することにより地球観測を行う光学センサの分解能の向上や、アクティブセンサーに必要な電力軽減、センサの小型化等のメリットがある。しかし、超低高度には空気が微量に存在し、衛星は空気抵抗を受けるため、そのままだと落下してしまう。そのため、超低高度衛星には空気抵抗を打ち消すための推進器が不可欠である。現在までのところ、ESA(欧州宇宙機関)によって「GOCE」(重量1100 kg)が2009年に打ち上げられ、日本でも「超低高度衛星技術試験機(SLATS)」(重量400 kg以下)が開発されている。これらはいずれもイオンエンジンを搭載・または搭載予定である。
 超低高度衛星はセンサの大型化によらずに分解能を向上させることができるため、今後超小型衛星サイズまで小型化が進むと考えられる。そのため、本研究では超小型サイズの超低高度衛星を想定した。


推進器の要求性能

 超低高度飛行を行う超小型衛星として、右図のような衛星を想定すると、要求される推進器の性能は消費電力10 W以下で推力1 mNとなる。このような要求性能を満たす推進器を開発することが、本研究の目的である。


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九州大学総合理工学府
先端エネルギー理工学専攻
山本研究室

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