「小型衛星用の推進機」 

 

 人工衛星や宇宙探査機にはスラスタが必要となる。 その用途は様々であり、その用途に応じた様々なスラスタの研究開発が進められている。  たとえば、ホイールのアンローディングやフォーメーションフライトのための微調整、デブリにならないための軌道離脱、静止軌道上での南北及び東西制御、 また軌道変更や低高度衛星であれば大気による抵抗補償、深宇宙探査のためのメインエンジン等々が挙げられる。 これを全部をカバーできる推進機はこれまでの所なく、それぞれ適材適所で仕事をすべく研究開発が続けられている。たとえば2液式スラスタは推力が非常に大きいが、比推力が小さいため、大気抵抗の補償や南北制御には向かないが、短時間の軌道変更には最適である。逆にイオンエンジンは比推力が大きいが推力が小さいため、軌道変更や軌道離脱には時間がかかる。

 これらのスラスタのうち、実機に搭載されたもしくは搭載可能なものも多い。平行平板型のPPTしかり、 大阪工業大学が打ち上げる衛星「PROITERES」には 同大学が開発したPPTを搭載予定であり、東京都立産業技術高等専門学校の小型衛星「輝汐(KISEKI)」にはレーザー着火スラスタが搭載された。

  
  イオンエンジン コールドガスジェット1 2液式スラスタ アークジェット マイクロ波励起プラズマスラスタ
推力 1 mN 5 mN 1.5 N 8.6 mN 0.5 mN
比推力 4,000 sec 30 sec 150 sec 78 sec 290 sec
消費電力 30 W ---   6.5  W 6 W
作動ガス キセノン キセノン DME/H2O2 N2 He
 主用途 南北制御・深宇宙探査・抵抗補償・軌道離脱 姿勢制御・軌道変更 軌道変更・軌道離脱・ホイールのアンロード 軌道変更 軌道変更
 実用化

 
  PPT(平行平板) PPT(同軸) レーザー着火スラスタ2 FEEP エレクトロスプレースラスタ3
力積 30 µNs 420 µNs 60 mNs 150 µN 5.6 µN
比推力 1100 sec 500 sec 100 sec 2500-4500 sec 3500 sec
消費電力  6 W 10 W  1 W 6 W 0.12 W
作動ガス テフロン テフロン B/KNO セシウム ionic liquid EMI-BF4
主用途  姿勢制御・軌道修正 姿勢制御・軌道修正 姿勢制御 フォーメーションフライト・姿勢制御 姿勢制御・
実用化

 

1第48回宇宙科学技術講演会1C17 μ-LabSatII のシステム設計

2M. Nakano, et al., "Laser Ignition Microthruster Experiments on KKS-1," TRANSACTIONS OF THE JAPAN SOCIETY FOR AERONAUTICAL AND SPACE SCIENCES, AEROSPACE TECHNOLOGY JAPAN, Vol. 8 (2010) No. ists27 pp.Pb_7-Pb_11

3Robert S. Legge Jr. at. al, "Fabrication and Characterization of Porous Metal Emitters for Electrospray Thrusters,"IEPC-2007-145.

実用化レベル

◎: 実機搭載実績有りもしくは可能

○: 開発終了間近

△:開発段階

×:構想段階

 

 

 

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