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学術研究助成基金助成金 挑戦的萌芽研究 課題番号:23656540

九州大学大学院総合理工学府
先端エネルギー理工学専攻

キャビティリングダウン法CRDS(Cavity Ringdown Specroscopy)

キャビティリングダウン分光法とは

「CRDS法の原理」

 キャビティーリングダウン分光法は左図に示すような2 枚の高反射ミラー(反射率>99%以上)で光学キャビティーを構成し、 閉じ込められた光は反射の度に少しずつ強度を減衰させながら反射を繰り返す。 反射の際に一部の光はミラーを透過してくるので、その強度の減衰を観測することでキャビティー内にある物質の密度および速度を測定する方法である。
 この手法を応用することによって、ターゲットサンプルの密度および速度が高精度で計測することができる。 キャビティーリングダウン分光法の概念図 リングダウン法はキャビティ内から漏れる光の強度が指数関数的に減衰していくその減衰率S(t,ν)を測定することによっても止まる。

 C-1  (C-1)

ここでνはレーザの周波数、τはリングダウン時間と呼び、1/eになる時間、cは光速、lはキャビティの長さ、線積分の方向xはビーム方向、 k は吸収係数、1-Rはミラーのロス(散乱やキャビティロスを含む)である。 吸収される物質の線密度はリングダウンタイムの変化から計算できる。吸収体が長さlabs,の柱状態では均一であるとすると、∫k(x,n)dxは k(n)・labs となる。 実際、測定されたリングダウン信号は指数関数でフィッティングされ、リングダウン時間τが求まる。 τとτ0から、サンプルの吸収度Abs(ν)と吸収係数が求まる。

      <C-2   (C-2)

レーザーの周波数をスキャンし、得られた吸収度のプロファイルを積分することにより、 レーザーの通り道上で積分された下順位の密度∫Ni dxが以下の式で求められる。


             C-3   (C-3)
CRDSの概略図



CRDS法の利点

○○○○○○○○イメージ

「測定感度が高い」

 二つのミラーによって形成された光学キャビティによって,光路長が長くなるため,測定感度が高い.高反射ミラーの反射率がたとえば99.99%とすると,光路長は10000倍になるため,感度は従来の吸収分光法の10000倍よい。実際に99.9985%のミラーも売っている.このため吸収断面積にもよるがたとえば吸収断面積が=6 cm2/moleとするとその感度は=10^11 molecules/ cm^3まで挙げることができる.
 このような高感度であり,レーザーの波長掃引幅がそれほど大きくなければ,密度および温度がほぼリアルタイムで検出できる.マンガン検出のシステムでは1秒毎の密度算出システムの構築に成功している.


○○○○○○○○イメージ

「絶対密度の算出に較正が必要ない」

発光強度から密度を算出するのではなく,空のキャビティと吸収体を設置したキャビティ二つのキャビティリングダウンタイムの違いから算出するために,密度の算出には較正が必要ない(もちろん計測機器の較正は必要であるが).


○○○○○○○○イメージ

「レーザーの擾乱に影響されない」

CRDS法は光学キャビティから漏れてくる光の減衰の時間を観察するため,その原理上レーザーのパワー(cw-CRDS)/エネルギー(pulsed-CRDS)の擾乱の影響は受けない.そのため,レーザーのパワー/エネルギーを常にモニタリングする必要はなく,実験装置の複雑さを軽減している。


○○○○○○○○イメージ

「圧力によらない」

吸収分光法であるため,光の再吸収を考慮しなくてもいい.そのため測定対象が必ずしも光学的に薄いプラズマである必要がなく,そのため発光分光法と異なり,測定対象の圧力には影響がない.


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「基底状態の密度が測定できる」

CRDS法は吸収分光法の一つであるため,その原理上,下順位の密度が計測できる.このため,発光分光法と異なり,直接プローブレーザの波長を選定すれば,マンガン(403nm)や鉄(373 nm)ホウ素(249 nm),水銀(254 nm)など,様々な原子の基底状態の密度が計測できる.そのため,下順位の密度の算出にCRモデル等を必ずしも必要としない.


○○○○○○○○イメージ

「どのような場所にも設置可能」

プローブ光として,半導体レーザーを持ち入れば,コンパクトであるために持ち運び可能であり,必要な部品も光学キャビティ,チョッパ(AOM),波長計,エタロン等,それほど大きくならない.このため,どのような場所にも持ち込み可能で,様々な実験設備で測定可能となる.スパッタされたマンガン検出用のcw-CRDS法システムは30cm×30cmのブレッドボード+光学キャビティで収まった.非。


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